ようこそ、この世界へ

北欧ラップランド地方のサーミの人々は、白樺のコブからカップを彫る。その木製カップはククサと呼ばれていて、贈られた相手には幸せが訪れる。

元々は生まれてくる我が子のために幸せを願いつつ、硬い木を少しずつ彫っていたらしい。

よし、ククサをつくろう。

まずはMora社の#120と#164の彫刻用ナイフを買った。#164は穴を彫るために曲がった形をしているフックナイフ。費用捻出のために宇宙兄弟のコミックスを売ることになった。

次に材料。白樺のコブは希少で入手は困難。ここは日本。ヒノキやスギでもいいかなと考えつつ東急ハンズへ。

そこには白樺のコブが売っていた。・・・が、あまりに高い。そこそこのテントが買える値段だ。隣で売っていた白樺の枝を800円で買った。子供用の持ち手を付けない小さなカップならこれでも十分。

枝を必要分切って、皮を剥ぐ。ナイフの彫刻作業は慣れてないので、おっかなびっくり。気休めの手袋をしてみる。

ここからはフックナイフの出番。苦戦。最初はこそげ落とすくらいしかできなくて、とにかく手が疲れる。うまく木の目を読むと、ちゃんと削れることに気づいた。それでもなかなかに大変な作業。
小さいながらも裏から見るとちゃんと年輪が出ていて、どこかかわいらしい。

2日ほど彫り進めて、サンドペーパーをかけた。枝のかたちに沿って彫ったから歪な形をしている。そこがまたお気に入り。

煮沸消毒して、干して、いつも使ってるオイルで仕上げ。

小さい自然の形に合わせたカップができた。奥のククサはフィンランドで買ったプーハリ社のもの。

そして昨日、僕は父親になった。
ようこそ、この世界へ。これが君への最初のプレゼントです。