家族のかたち

「ファミリーキャンプ」

なんて平凡で、なんて幸せそうな言葉だろう。
ファミリーキャンプがしたい。子どもが生まれてから、ずっとそう思ってた。

だけど、テントがない。
家族で泊まれる大きさのテントがない。

いろんなテントを見て、いろんな人に聞いた。

ファミリーならあのメーカー？コットン製は雰囲気がいい？ビンテージ物はどう？

そしてこのテントを選んだ。
THE NORTH FACEのVE-23。30年ほど前の古い中古テント。
ビンテージというほどの大げさな物ではないし、ファミリーにしては小ぶりの2〜3人用。

・・・うん、たぶんファミリー用じゃない。
でもこれがいいと思った。

一人用のマットがぎりぎり3枚収まらないくらい。小さい子供1人と大人2人なら十分寝られる。底面は正六角形だから、左右に荷物置き場もできる。

フライ、インナー、長いポールが3本と短いポールが1本。インナーのスリーブに3本のポールを通せばすぐに立ち上がる。

ドームテントの原点とも言われるVE-24の妹分的存在らしい。弟じゃなくて妹なのも何だか分かる気がする。

ちなみにモデル名のVE-23は、
VE = Vector equilibrium ベクトル平衡体
2 = 2人用
3 = 3ポール
ということらしい。ベクトル平衡体とは、各辺が全て等しい正三角形と正方形で構成される八面体。物理的に安定した形状。これを半分に切れば、まさにこのテントの形。

入口のちょこんと伸びた角が愛らしい。

インナーに革で留められた金具と、フライの間に短いポールを立てることで、角が実現されてる。とても簡単な構造。

中へ入ると真ん中は背が高い。ファミリー向けテントからしたら低いんだろうけど、自分が今まで使ってきたテントの中では抜群に広く感じる。
子どもがまだ小さいうちは、この広さで十分。

理論的な構造、簡単な設営、愛嬌ある佇まい。ベージュのフライの下に、ちらりと見える緑のインナーのカラーリング。

中古なので既に味が出てる。まるでずっと自分が使い込んできた物のように、全てがしっくりきた。

大きいテントよりも、小さいテントのほうが性に合ってる。寝る時以外にテントに入ることはほとんどない。空の下のほうが好きだ。

妻も息子も気に入ってくれたみたい。

最近作ったタープとの相性も良い。

テント選びは難しい。
でも自信を持って言える。

このテントが、いまの自分の家族のかたち。