知床エクスペディション2019 Pt4
Day5:
いつもどおり5時に起床。この日は午後より風が吹くかもしれないということで早朝6:30に蛸岩を出発しました。風は無いのですが、岸の波打ち際で波がかなり高く、コクピットに乗り込んでからMさんにカヤックを引きずってもらい、ロケットスタートしました。半島の西側に来ると太陽が上ってくるのが遅く、朝のパドリングは非常に寒い状態でした。しばらく進むと硫黄山のピークが見えてきます。
そして河口から海側へ吹き出す風で知られるルシャ川へと到着しました。この地点から実はウトロまで林道(一般車両は通行禁止)が通っていて、何かの施設やら車が止めてあったりするので一見、平和な光景に見えるのですが、周囲の山から吹き下ろしてきた風がV字型のルシャ川の谷に集積され、一気に河口から爆風となって吹き出す、という難所です。他の場所が無風でもここだけは爆風になるそうです。近づくにつれ、確かに無風だったのにだんだんと陸から風が動いてくるのを感じました。そして河口が見える地点になると噂通りの爆風。河口からの強風で波が岸から海へと流れるくらいの爆風です!幸いうねりは小さかったので無事突破しましたが、ユキエさんが新谷さんに「今のルシャの風は10点中何点ですか?」と聞いた所、「3点」だそうです。大体の場合もっと強烈な爆風になるそうです。恐ろしい!写真を撮る余裕がなく写真無し。
ルシャ川を突破した後は、平坦な台地が続くのですが、浜はやはり波が高く、トイレ休憩で上陸した新谷さんが大波をかぶってずぶ濡れになっていました。自分もトイレ上陸しようと後に続いたのですが、波が高すぎて断念。最悪の場合はカヤックに乗ったままジップロックに用を足せ、と言われましたが、ハードルが高すぎます!このあたりまで来ると観光船も頻繁に岸側を運行するのでカヤック同士が離れないように進みますが、巨大な観光船の曳き波で尿意が刺激され困りました(笑
やがて有名なカムイワッカの滝へ到着、ここで昼食となりました。ここは大きめの湾なので波もなく、久しぶりに平和な上陸ができました。昼食は行者ニンニクの残りを油で炒めて、ラーメンに投入。これまた非常に美味でした。この場所は風光明媚なところですが、明治時代から昭和まで硫黄の採鉱が行われており、火薬の原料として出荷されていたそうです。2本の滝の中間に家屋跡があるのですが、これは第二次世界大戦の時に強制徴用された外国人鉱夫の宿舎跡だそうです。過酷な環境なので、多くの鉱夫がこの場所で亡くなったそうです。R.I.P.
カムイワッカの滝を出発し、すぐ近くのマムシ浜(多分)という浜が本日の野営地。上陸とほぼ同時に風が吹きだし、あっという間に海面は白波が立つようになりました。テントを設営するのに苦労しましたが、岩陰のナイスな風よけができる地点に設営。夜は突風になるからテント内の四隅に石を置いておくよう新谷さんから指示が出ました。
新谷さん天気予報によると2つの低気圧が北海道北側を通過しているので明日出艇できるかどうか微妙な天候とのこと。予備日として丸一日余っているので必ず明日ゴールする必要はないのですが、この先の斜里町ウトロまでは上陸できる場所が非常に少ない断崖絶壁の難所になるそうです。
この浜は南側に沢がありますが、沢伝いにヒグマ来るかもしれないので注意するように言われました。なので沢から遠く離れた場所に本部を設営したのではないかと思います。
豆:ヒグマと遭遇しても決して走って逃げてはいけない。ヒグマは時速50キロで走ることができるので人間が走って逃げるのは不可能。知床で現在人間を意図的に攻撃するヒグマは確認されていないので、ゆっくりと後ずさりして50メートル以上の距離まで離れるようにすること。
新谷さんによると、ほとんどのヒグマは人間を見るとすぐに逃げるため、それほど心配ないそうですが、数回至近距離まで近づいてくるヒグマに熊撃退スプレーを吹きかけて追い払ったことがあるそうです。
夕食は・・・思い出せません(笑 がご飯物。皆で酒を飲みながら話をしつつ、ゴールのウトロまであと10キロないくらいですよね?となにげなく聞いたところ、新谷さんは「そうだけど最後まで油断しちゃだめだ」と語ったのが重い言葉でした。幸い寒くはなかったのですが、爆風でうるさいテントの中で明日はどうなってしまうのだろうか・・・と一抹の不安を感じながら就寝。続く
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kuma
雄大な自然の美しさと厳しさが伝わって来ます! 船中のトイレ問題やヒグマ遭遇時の話なども参考になります! 次も楽しみです!