知床エクスペディション2019 Pt5
Day6:
5時に起床し、Mさんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら海を見ていると、昨日の夜ほどではないですが、かなりの西風で海面は波が立っていました。朝食後にテントを撤収しつつしばらく待機、と言われたのですが、一時間もしないうちに「行けるところまで行ってみよう」との指示が出て、7:30頃に出艇。
マムシ浜の小さな湾を抜け出すとすぐさま強烈な向かい風となりました。幸い大きな波にはなりませんが、三角波が発生しカヤックはグラグラと揺れます。そして上陸不可能な断崖絶壁の中を懸命に漕ぎますが、またしても爆風向かい風でまったく前に進みません。例えて言うと、関東に台風が上陸する前夜のような強風でした。途中まであまりの進まなさと三角波の激しさと、恐怖で喉がカラカラになっていましたが、ある断崖絶壁の横を回っている時、全員が懸命に漕いでいるのにまったく前に進んでいないのを見て「コントみたいだな!」と思い逆に楽しくなってきてしまいました。もうどうにでもしてくれ!という心境でもあります。
距離にしてたかだか4キロくらいなのですが、なにしろ爆風の向かい風の中、時速1キロか2キロくらいで進んでいたため激闘2時間の後、知床五湖の近辺に到着。風はいつの間にか止んでいました。このあたりでケイマフリという赤い足の珍しい鳥の大群が目の前を横切り、鳥好きのMさんは大喜びしていました。
爆風向かい風の激漕ぎを終えてカヤックに乗ったまま休憩。イワウベツ川河口のサケ・マス孵化場の近辺でオヤツを食べる余裕もありました。
そして孵化場のすぐ先の岬を越える時、Tさんがこの先がゴールだよ、と教えてくれました。この日の漕いだ距離をいまいち把握していなかったので実感がわきませんでしたが、すぐにウトロの港と空港から車でS村へやってきた時に通った道路が見えてきました。感動のゴール。
ゴールを前にしてタバコに火をつける新谷さん。
普段は電子タバコを吸っているのですが、海上では使えないので新谷さんにタバコをもらい一服。静かに達成感に浸ります。Pic by Mさん
上陸後、やっと新谷さんはほっとしたような表情を浮かべていました。向かい風が強烈だったため、途中で引き返そうと考えていたそうです!全員で無事ゴールできたことを喜び合いながらカヤックと装備を撤収し、S村のコテージへ帰還しました。
この日の夕食はS村オーナーさんのご厚意でタラバガニと鱈食べ放題。カニ漁の許可がない漁船の網にタラバガニがかかってしまうと出荷できないので全部持ってけ!と漁師さんに言われるそうです。オーナーさんは昨日、100匹のカニの殻を剥き、茹でて冷凍したのでもうカニは見たくもない!と贅沢な悩みをおっしゃってました(笑
その他天ぷらにしてもらった行者ニンニクが超美味でした。
この日は北海道のアウトドアガイドの現状や環境保護のあり方について話が盛り上がっていましたが、疲れ切っていた自分は早々に寝落ちしていました。
S村オーナーさんの愛犬、ベラちゃん8歳。床に人間の食べ物が置いてあっても絶対手を出さないお利口さんです。
Day7番外編:
この日は予備日だったので一切予定無しのフリー。のんびりしようかと思ったのですが、せっかくなので知床五湖へ観光へでかけることにしました。Mさんに五湖フィールドハウスまで送ってもらいますが、Mさんはすぐに帰宅するということなので再会を約束し固く握手。五湖一周の遊歩道を歩いてみました。
歩いている間は天気が良かったのですが、S村に帰還するバスを待っている間にみるみる土砂降りとなりました。
S村へ帰ってきて、昼過ぎでしたが温泉に入り、早々にビールを飲みまくりました。この日も改めてカヤックの話、登山の話、新谷さんが責任者を務めるニセコ雪崩情報の話、また、お役所の対応の悪さ(笑 などの話題で盛り上がりました。明日で帰宅すると思うと寂しかったのですが、正直に言って、いい加減ベッドで眠りたいのと我が家のワンズに会いたい気持ちの方が大きくなっていました。
最終日5/9
ユキエさんは札幌へ向けて帰宅し、Tさんと一緒に新谷さんに女満別空港まで車で送ってもらいます。帰路でも網走のロシア正教の教会の歴史など面白いエピソードを教えてもらいました。女満別空港にて新谷さんと握手し、お別れ。「海を漕ぐ時はいつも用心だぞ!」とアドバイスをいただきました。
羽田へ到着し、福岡へ乗り継ぐTさんとも再会を約束しお別れしましたが、しばらくの間、東京にいる現実になじめず、「アリューシャン・・・」とつぶやきながらふらふらと歩いていました。が、品川駅でJRの発車合図の音楽を聞いた途端、はっと我に返り、素早くJRの運行情報をチェックしてしまうのがサラリーマンの悲しい性(笑 なぜだかわかりませんが、品川駅で一気に東京モードへと切り替わりました。そして夕方には無事帰宅し、素晴らしいエクスペディションは終わりを迎えたのでした。
*もし知床エクスペディションに興味がある方は「今すぐ」参加することをお勧めします。やる気さえあればテクニックや経験は不問ですし、御本人には失礼なのですが、新谷さんご自身が高齢ということもあり、そのうちいつか・・・と待つのは得策ではありません。
長文お読みいただきありがとうございました。
完
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Usa
pt1から読み応えある壮大なドキュメンタリーのようでした! 無事で何よりです。 自然と対峙するときには常に用心することを改めて学びました。
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kuma
冒険記のような話で最後まで読み応えありました! 常にリスクを考えて経験や知識で回避したりチーム一丸で乗り越える達成感が伝わって来ました! 指以外は大きな怪我ありませんでしょうか。 お疲れ様でした!