涙の種、笑顔の花🌸
満開の桜の花を見ると、ある方の事を思い出さずにはいられません。
その方は、自分にとって「恩人」と呼ばせて頂かなければならない程、自分に影響を与えてくれた方でした。
その方との出会いは、もう20年以上前、自分が26歳の時の事です、
当時、自分は結婚したばかりの頃に、とある事情から転職したばかり。
その事情により、かなり人間不信的な考えに囚われていて、女房と産まれたばかりの息子、同居している家族の他には一線を引いての付き合い方しかして居らず、学生時代からの友人達とも積極的には交流を持っていませんでした。
自分が勤め始めた会社は、それまで職人として培ってきた技術をそのまま仕事に活かせる、建設業の中堅企業で、いくつかの支店があり、技術職や事務職の他にも営業の人もいる、それまで会社組織に属した事の無い自分にとっては初めての環境でした。
上司や同僚、他の部署の先輩、他支店の方々など、急に大勢の中に入ってしまった自分は、元来からのあまり社交的では無い性格が災いし、ある程度仕事では認められながら(?)も、社内では打ち解けられずにいました。
そんな中、ある支店勤務から本社に転属になった自分に、自分の専門分野の仕事で妙高支店の応援に行かなくてはならなくなり、またよく知らない支店員さんと仕事をしなければならない事に、若干の不安と苛立ちを感じながらの出向が決まりました。
そして向かった妙高支店で、そこの担当者
「Uさん」に出会いました。
Uさんは、当時40歳くらいの女性の方で、この会社に入ったのも35歳を過ぎてから。
仕事を覚えたのも、特に専門の人から教わった訳では無く、自分から見ると、まだ素人の域を出ない感じの主婦の片手間仕事に見えました。
Uさん自身は、底抜けに明るく、いつも笑顔を絶やさない世話焼きのオバちゃんといった印象で、当時の自分からすれば、若干ウザい、と感じられるほど馴れ馴れしく思えました。
仕事に関しても、自分はハナからUさんの事をマトモに相手にせずに見下して、年長者に対する態度ではなかったと思います。
そんな自分に、屈託なく笑いかけ、話し掛けてくれるUさんに、徐々に自分も胸襟を開いて話をするようになっていきました。
同年代の仕事仲間や、職人気質な上司、利益優先で社員の事など二の次に思える会社の愚痴など、なぜかUさんには話すようになっていました。
「じょう君は、仕事してても、あんまり笑わないねぇ」
「、、、いや、真剣にやってるし、ニヤニヤしながら仕事ってするもんじゃないでしょ」
「仕事は大事だけど、あんまり張り詰めてると疲れるでしょ」
「オバさんは気楽でいいっすね。そんな事よりも、もっとシッカリした仕事出来るようになってよ」
「あたしはいーんだよ。いざとなったら、またじょう君に手伝ってもらうから」
「ふざけんなよババァ!」
軽口を叩き合い、妙高支店に応援に行く事が億劫ではなくなり、会社の方々とも段々と打ち解けられてきたと思えるようになった頃、丁度今ぐらいの時期に、またUさんと仕事をする機会がありました。
妙高支店の近くには、「高田城址公園」という桜の名所があり、たまたま早く仕事が片付いた自分とUさんは、
「ちょっと見て行こう」
というUさんの提案で、そこの桜を見て行く事になりましたが、既に満開の時期を過ぎて葉桜が目立つようになっていました。
「今年は一番いいところを見逃した」
「屋台もたくさん出て、あたしの一番好きな時期なんだ」
「じょう君にも見せたかった」
と、残念がるUさんに、自分は
「こんなに広くて、沢山の桜の木があるわけじゃないですけど、ウチの近所の桜も綺麗ですよ。
アゲマンっていう、花見の時期にしか売ってないモンもありますし、今度奢りますよ」
と、軽い気持ちで約束しました。
「アゲマン⁈ あたしの為にあるような食べモンだね〜! アッハッハッハッハ!」
下ネタも大好物のオバさんは、漫画やアニメも大好きで、愛読書は少年ジャンプ、息子に渡す前に自分の好きな漫画は読んでおくという念の入れよう。
オバさんというより、どちらかといえばオッサン寄りな方でした。
その会社で2年余りが過ぎ、元々独立して仕事を受けて行こうという目標を持っていた自分は、他の個人事業主の方の所で学ばせて頂いた後、一人親方として独立しました。
その会社を退職する時も、独立する時も、Uさんは変わらない調子で応援して下さいました。
「仕事が無かったら、いつでも言ってきな〜。
いくらでも廻すから!」
「忙しいなら、いつでも手伝いに行くよ〜!
あんまり役に立たないけどね〜?」
「また、仕事ばっかしてるでしょ!?
パチンコ行かない?」
「たまには呑みにでておいで〜!
オバちゃんとジジィしかいねーけどね!」
何かにつけてお世話になり、自分の仕事もある程度順調に行くようになった頃、唐突にUさんに連絡が取れない事態になりました。
「ちょっと体調崩して、入院してたんだ」
そう言って、一時退院して来たというUさんは、強い薬飲んでたから髪が抜けちゃってね、と、カツラを被っていました。
「いや、一応、女だし、
カツラ取るとコレだしね〜。」
戯けるようにカツラを取ると、まばらな五分刈りのような頭がありました。
「、、、そっちの方が似合ってますよ?
ベリーショート、可愛い感じで。」
「やっぱそう思う?このカツラ、毛量が多くて、似合わないんだよね〜」
また入院するというUさんは、しばらくは仕事も出来無いし、携帯も解約するから、良くなったらコッチからまた連絡するね〜と笑いました。
それがUさんにお会いした、最後の日になりました。
Uさんの訃報を聞いたのは、Uさんが他界されてからかなり月日が経ってからの事です。
Uさんに紹介して頂いた仕事先の事務員の方から聞いた時は、比喩でなく目の前が真っ暗になったのを覚えています。
未だに桜の花を見ると、何かにつけて自分を気に掛けてくれたUさんを思い出し、感謝と共に、何も恩返し出来ていない自分が歯痒く感じられ、居た堪れない気持ちでいっぱいになります。
今年も、ウチの近所、東山の桜が満開になりました。
Uさんと見る事は叶いませんでしたが、
Uさんが自分の中に残してくれたものは、確かに、自分を変えてくれたと思います。
貴女が自分の中に撒いてくれた、小さな種は、
確かに自分の心の中に芽吹き、沢山の人達と関わっていく中で育ち、自分の周りに桜に負けない程多くの、「笑顔」という花を咲かせています。
Uさん、本当に有難う御座いました。
自分は、今、心から
笑えています。
-
shunout
イチバーン
-
hipopomas
ニバーン
-
のいのい
泣くわ。 とがってたじょう先輩。 懐が広いUさん。 あげまんを泣いて食べてるじょう先輩の姿が目に浮かぶ(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
-
あっちん
じょう先輩にとってUさんとの出会いに意味があったように、Uさんにとってもじょう先輩と出会えた事はとても意味のある事だったんじゃないかな。 そして、今、Uさんはじょう先輩と一緒に桜を観ているよ。 約束はちゃんと守られているよ☺️
-
hound
良い話しだー 私もスネキズ系のキャラなんで静かに共感しまくります
-
ハナ🌟カラ
このお話のことだったのですね。 繋がりました。 私は桜を見ると母校の学徒出陣された学生さんを偲び、 じょう兄さんはUさんを偲ぶ。 でも私は桜を見てDayOutでの出会いを嬉しく思います。 じょう兄さん、ありがとう。
-
jamio2
😭
-
ポチョム
Uさんとの大切な思い出は、桜が全部預かってくれてるのだと思います😭✨ だから、毎年 綺麗な花を咲かせているんですよ!🌸✨
-
Koyabu🔰Gohan
あと何年桜を見ることができるんだろうと改めて思いました。 出会いと別れの時期にこんなにもお辛い思い出が...(T-T)
-
ジミヘンギミックス
美しい。若気の至りでの後悔は、誰でもあると思いますが、そのことを今振り返るひとまわり大きいじょうさんがいる。 きっと受けた恩を誰かに順にリレーしていくことでしょう。自分も旅先で親切してくださった方に、「息子があなたみたいな方に昔お世話になったのよ。」と。Uさんはじょうさんに会えたことを喜んでいると思いますよ。
-
うち猫ころころ
良いお話に、綺麗な桜の写真でした。 ありがとうございます。 ほんま、泣ける。
-
ゆか🐰
Uさん… ステキな種を現世で撒いていかれたかた。 天国でもまたそうして過ごしておられるのかもしれませんね。
-
ミスター X
すごく切ないお話…😭😭😭
-
ハーラ
携帯解約の時には、もうご自身の死期などは悟られて、じょうさんに余計な心配はかけないようにしていたように見受けられますね😔 人生に大きな良い影響を与えてくれる方との出会いと言うのは一生の内でそう何度もある事では無いと思います。 そういう出会いに巡り会えたじょうさんがとても羨ましいです😃
-
anzrock
今のじょうさん、それもDayOutとインスタでしか知りませんが、どこでもグイグイ入っていける凄くフレンドリー方だと思ってました。 Uさんとの出会いがあったからこそなんですね。 そんなUさんへの想いを素直に表現できるじょうさん素敵です! しかし、ババァはあかんでしょ🤣
-
frolic
じょう先輩、涙が😥 想いの乗った文章はストレートに心に響きます。 そういう方に出会えた事は、本当に財産ですよね!!
-
novurie(ノヴリエ)
じょうさんとUさんの関係がすごく伝わりました。桜の季節はじょうさんにとって切ない季節なんですね。 朝から涙が😭
-
O-DEN
普段のじょうさんの面白い投稿を楽しく拝見している私から見ても、じょうさんが笑顔で毎日を過ごしていると分かります。 人は様々な出会いと別れを繰り返しますが、別れたとしても、時々その人のことを思い出し、想うひとときがあるだけで、その人の存在、生きた意味は永久に消えないと思います。 私も大切な人を亡くした経験がありますが、いつもそう思って感謝しながら笑顔で生きてます(^-^)
-
気球
桜もこのストーリーも美しいです😭 桜を見ると色んな思い出が蘇りますよね。
-
SHINO
(;ω;)ブワッ 私も後悔のないように、恩人や家族、友達を大事にしていこうと改めて思いました 素敵なお話ありがとうございます(;o;)
-
tomayu
素敵な出逢い、素敵なご関係ですね✨ 毎日を全力で楽しく生きねば……!
-
fu.u
素敵な女性ですね👍心を大きく成長さて下さってる様な気がします。きっとじょうさんの笑顔を喜んで下さってるでしょうね😊
-
なみこう
ただ今、帰りの通勤電車の中 がっつり読み込んでしまいました 上手いコメントができなくてすみません ただ ありがとうございました👍