転生魔王ののんびりキャンプライフ🌋後編

心地良い眠りから覚めて、時間を確認すると
通常の起床時間よりも早いAM4:30だった

昨夜は多分、PM9:00前に寝落ちしてしまったであろう事を考えると随分と熟睡出来た

朝も寒さで起きたわけではなく、単に年齢によるものだろうと思われる

二度寝しようかとも思ったが、せっかくの朝の空気を満喫する為に散歩してみる

この時間帯は空の色が目まぐるしく変化し、それを眺めているだけでも全く飽きない

日の出が木々で見られなかったが、充分に天空神の恩恵を堪能し、サイトへと戻っていく

予約は他に1組との事だったが、他にも3組くらいの方々が訪れていたようだ

熊対策の為に車内に避難させていた食料やゴミ袋を戻して、朝飯の準備に取り掛かる

まずはお湯を沸かし、コーヒーを一杯

身体に染み入る気がするが、俺はコーヒーにはそれほどの拘りを持っていない為にインスタントだ

続いて豚バラをニンニクの芽と炒め

メスティンで冷凍うどんを温めれば

肉うどんの完成だ

昔に比べて、そんなに食べられなくなってきているが、丁度良い

朝食を終えて、ひとまずは必要ないものを撤収してゆく

チェックアウトの時間はAM11:00だが、受付をした温泉施設♨️がAM10:00に開くので、その時間までのんびり過ごして、温泉に入って帰ろうと思う

他の物を全て撤収してもAM7:00を過ぎた所だ

ハンモックのみ残してのんびりと過ごす

なんとも贅沢な時間を、心ゆくまで堪能する

そうこうするうちに時間は過ぎ去り、温泉の開く時間になる

朝から温泉というのも良いが、それがまた平日だというのが特別な気分にさせてくれる

今回のキャンプは突発であったにもかかわらず、トラブルらしいトラブルにも見舞われなかった最高のひと時を過ごす事が出来た

思い切って決断して正解だったなぁと思いつつ帰路につく

全てが順調に過ぎるキャンプはこうして幕を下ろした

願わくば次のキャンプの機会が早めに訪れ、また最高の時間を過ごせるようにと、自然に感謝の念が湧いてきたのだった、、、

side K

私がいつものパートの仕事を終えて帰宅すると、リビングのソファーに彼が横になっていた

昨日から近場のキャンプ場で野営を楽しんで来た彼は、私が帰宅するといつもの笑顔で迎えてくれた

私にも色々と帰宅後にしなければならない事はあるのだが、子供のように目を輝かせた彼が、タブレットで撮った写真を見せながら興奮した様子で話してくるので苦笑いを浮かべながらも聞くしかない

、、、、そして思うのだ

前世の彼にとって、これほどの喜びは果たしてあったのだろうか？と、、、

私は彼の前世が、異世界における魔王だった事を知っている

彼自身が気づいている素振りは無いが、もし前世の死期後に記憶が戻る例が当てはまるならば、そろそろその時期だろう

今日も彼は話の端々に、キャンプが如何に楽しく、癒されるものであるかを私にアピールしつつ、今度は一緒に行かないか？と誘うのを忘れない

しかし、彼は知らないだろう、、、

アチラの世界での野営が、どれほど危険で恐ろしいものであるかを

魔物が闊歩する向こうの世界では、野営など一般の人間にとって自殺行為に他ならない

交代で見張りを置き、厄介な者達に見つからないように火を使う事もままならないのだ

それでも目的の為に危険を顧みず野営を繰り返し、疲弊した身体で辿り着いた先に彼は居た

禍々しくも豪華な城の執務室と思われる部屋で対峙した彼は、目の下に濃いクマを作りながらも圧倒的な魔力を感じさせるその紅い瞳をこちらに向けた

「で？、、、我を倒した後、貴殿等があの手のつけられない魔の者共を統率してくれるのかね？」

我等がただ、人間達の為と信じて起こした行動は、実は意味の無い事だったと気づいたのは全てが終わった後だった

そう、、、

私は前世で「勇者」と呼ばれた者だったのだ

我等に討たれたその時に見た、彼の表情に魅入られた私は、今生で彼に逢える事を創造神に願った

彼よりも年齢的に若くして死んだ私は、彼と出会ったその時から彼が「魔王」だったことに気づいていた

そして、彼の隣で、彼と共に生きていく事を決めていたのだ

今生での彼は、自身もそうと感じているように普通という言葉が一番しっくりくる

、、、が、様々な人生における岐路において、彼がとってきた行動は、前世を感じさせる不敵で大胆な決断が多かったように思う

だから私はこれからも彼の隣で見続けるのだ

彼が道を踏み外さないように

決して油断は禁物だ、私の愛しい彼は「魔王」だったのだから

転生魔王ののんびりキャンプライフ [ 完 ]