転生魔王ののんびりキャンプライフ🌋前編
かつて俺は「魔王」と呼ばれる存在だった
この世界で言えば、中世くらいの世界で、50年ほど覇権を握っていた
そちらの世界にはコチラの世界には薄い「魔力」と言われている力が溢れており、魔物と呼ばれる獣や魔人と呼ばれる種族の亜人がいた
魔力は人間にも使える力であったが、魔物や魔人の使う「魔法」は人間の使えるソレよりも強力な威力を発揮した
俺は魔人族の中でも特に魔力に高い適正を有しており、「魔神の加護を受けし者」として魔に属する者達をまとめていた
基本的に力を持っており、上位種族としてワガママに振る舞う魔人や魔物を取りまとめるのは、本当に骨が折れる事だらけだった
人間やエルフ、ドワーフなどの人間種や、ドラゴンをはじめとする高位モンスターと争いが起きる暇が無いほど、魔族達の内輪モメは激化していた
しかし、それはコチラの事情だ
魔族以外の者達にとって、やはり我々は脅威だったのだ
人間の中から魔力に特に親和性の高い「勇者」が現れるのは、この世界では当たり前の事だった
そして勇者は魔王を倒しにやってくる
何人かのパーティで俺の城に乗り込んで来た時、俺は神に対して不敬を働いていた同族の事後処理で、かれこれ7日は徹夜で書類と格闘していた
、、、まぁ、勝てるわけが無いわな、、、
アッサリと討たれた俺は、この世界の創造神の元へと魂だけとなって送られていた
「なんつーか、、、ごめんね?」
創造神の第一声がソレだった
「いや、お気になさらないで下さい。
ところで、あの天候を司る神との和解は成ったのでしょうか?最後の仕事だったので、それだけが心残りです、、、」
「いや、そちらは気にしないで大丈夫。
彼にも自業自得の面があるから、別の世界に派遣することになったから。
ところで、君も生前はかなり辛い立場だったから
転生に関してはコチラとしても融通しようと思っているんだが、何か希望はあるかな?」
「、、、そうですね、、、出来れば、来世は魔王などという特別な存在ではなく、極く一般的な者として生まれて来たいですね。
ああ、でも魔力が高いとそうはならないかな?」
「、、ああ、わかった、本当に君には苦労をかけてしまい申し訳無かった。
次は魔力が無い世界に人間として転生してもらおうか。
特殊なスキルとかは必要かね?」
「いえ、極々普通の一般的な者にスキルは必要無いのでは?
力はあれば良いと言うものでも無いと気づきましたから、、、」
「そうか、君が言うとそうなんだろうと納得するよ。では、魔力も魔族も魔物も居ない、いや、亜人種やモンスター種も居ない世界で、次の生を謳歌することを願っているよ、、、」
そうして俺はこの世界に生まれ変わったらしい
今生では至極普通の生活を送り、優しく美しい妻と三人の子供にも恵まれた
子供達の手も離れた頃になると余暇を使って様々な趣味に手を出し始めたが、妻はある程度の理解を示してくれ、ほぼ俺の自由にさせてくれた
趣味の中でも特にハマりつつあるのがキャンプだ
前世でブラックな役割を負っていた俺が、自然の中でゆっくりと過ごす事に憧れてしまうのは、ある意味当然の流れだったように感じる
その日も予定していた仕事が変更になり、ぽっかりと平日の2日が空いてしまった
他の仕事を入れようか悩んでいた時、急に前世の記憶が蘇った
違和感が無かったわけでは無いが、その事が自分の背中を押し、せっかくの機会なので空いていそうな平日キャンプに出かけようかと思い立ち、妻に相談すると心良く了承してくれた
「人生をのんびりと楽しむ」
かつての自分にそう誓い、俺は動き出した
予定が変わったのは前日の夜だった為、当日は朝から仕事の道具を下ろし、キャンプに必要なギアを載せる作業に追われた
電話予約の時間には準備が整い、早速予約を入れると
「本日のご予約は他にもう1組だけになっておりますので、来場されてからお好きなサイトを選んで頂いて構いませんよ?」
との返事
やはり平日のキャンプは魅力的だ
ちなみにこの世界では現在、感染力の強いウイルスが猛威をふるっており、ソーシャルディスタンスを取る事が必須になっている為、その観点からも有り難い
予約を取ったのがAM8:30、チェックインがPM1:00からの為、早めに買い出し、昼食、入浴を済ませてからゆっくりしようと決めた
俺の住む長野県には海が無い為、たまには海鮮に舌鼓でも打とうとわざわざ遠回りして買い出しをし、その後、この世界に来てからハマった食事であるラーメンを食べる
コチラ方面にキャンプに来た時には楽しみの一つとして「食堂ニューミサ」の味噌ラーメンを食べる事にしている
ニンニクの効いた味噌ラーメンは、これからソロで過ごす事を考えても気兼ねなく食べられるのが嬉しい
この日は予約客が少ない事もあり、通常のキャンプ場入り口の受付では無く、隣接する温泉施設でのチェックインになると聞いていたので、受付前にひとっ風呂浴びてチェックインした
あとはゆっくりと過ごしたいと思う
今回は、自粛期間中に色々と購入したものを試してみるのも楽しみの一つだ
迷いに迷って購入したDDハンモック-フロントラインXLにDDタープ4×4を張り、そこに横になればやはり買って良かったと満足感が込み上げてくる
設営後のビールは格別というしか無い旨さだ
まだ少し暑い日が続いているが、このキャンプ場は標高も高く林間なので、涼しい風が吹き抜けていく
こちらも買ったはいいが火入れがまだだった
ウルフアンドグリズリーのコンパクトになる焚き火台、キャプテンスタッグの五徳を合わせて焚き火での調理も安定しそうだ
ゆったりと流れる時間を楽しみつつ、前世では終ぞ得られなかった贅沢な時間を過ごす
夕食にはここ最近ハマっているメスティン炊飯で、海鮮尽くしの雲丹イクラサーモン丼
家族に多少の罪悪感を感じつつも、なんとも豪勢な夕食をとる
時折、家族、特に妻にはキャンプの楽しさを説き、誘ってはいるのだが、色良い返答をもらえた事は未だに無い
ランタンの灯りに癒されながら、普段の晩酌よりも多少飲み過ぎてしまうが、そこを気にするのは野暮というものだろう
ここで気になり出したのは、実はこの日は夕方から雷を伴う豪雨が局地的にあるだろうという予報だ
最悪、車の中に避難し、車中ハンモック泊でやり過ごそうとは思っていたが、ここまできたら折角のDDハンモックで泊まりたくなってきた
今後の天候の急変に若干の鬱な気分を味わっていると
「、、、呼んだかい?、、、魔王、いや、元魔王か?、、」
突然、頭に懐かしい声が響いた
「まさか、、、コチラにいらしてたんですか?
天空神様、、、」
「まぁね、例のイザコザで飛ばされたというべきかな?私としては不満は無いのだが、、、
ところで、私に声を届ける事が出来るとは前世の記憶が蘇ったとみて間違い無いかね?」
「ええ、実はつい先日までは忘れていたのですが、、、」
「それは君が前世で亡くなった年齢に達したからだと思われるね。コチラに来た転生者には極稀に起きる事象だよ。何か私に用があるんじゃないのかね?」
「私的な事で誠に恐縮なのですが、、、
今、私が居る所に雷雨の予測が出ているんですけど、変えて頂くわけにはいかないでしょうね?」
「プッ!、あははははは!
魔族の為に私欲を捨てて猛進していた君とは思えない発言だね?
いや、良い傾向だよ。
コチラに来て少しは意識が変わったとみえる。
しかしコチラの世界は向こうと違って全ての事象がシステムとして決められていて、神が干渉出来る幅が少ないんだよ。さすがは[D]と言った所か、、、
それでも君には前世で辛い想いをさせたからね、
今夜から明日にかけては、私の権限で好天を約束しよう。
ただ、今後は期待しないでくれよ?
私が大神に目を付けられてしまうからね。」
「ごもっともです。
御心を砕いて頂き、感謝の言葉もございません。」
「それでは良いキャンプを楽しみたまえ、人となりし魔王よ。」
「有り難き幸せです、天空神様」
神との約束を取り付け、安心してハンモックに潜り込めば、あまりの心地良い揺れに、酔いも手伝ってあっとゆうまに睡魔に襲われる
ちなみにアチラの世界にも、睡魔と言われる魔族は居ない
蚊帳から気持ちの良い風を受けながら、天空神が見繕ってくれたであろう暑くも寒くもない快適な気温の中でシュラフに入る事も無く、俺は眠りに落ちていった、、、
後編に続く
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コージ
なげぇーよ🤣🤣🤣
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のいのい
さすがやわ🤣 小説家になる❓ ウニとイクラ⁉️ ズルくない❓
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焚火道「JJ茶の子」
コレはバリバリの罪悪感たっぷりキャンプ飯ですね…😅💦 私もよくやります…「笑💦
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ponpon
まさか!こちらに転生なさっていたとは!! 魔王J様!!!
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ハナ🌟カラ
魔王様、私です、私です‼️ お忘れになられましたか⁉ ハナ🌟カラ️でございます‼️ 鼻からウドンを出してた私です‼️ 懐かしゅうございます‼️
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mie ⌘ みい
イザコザで なんちゃらで 私欲を捨てた 魔王…いや 元魔王の君には そのランタンは もう必要なかろう… すぐさま グンマーに送付するのじゃ!! by 天空神より✌️
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mako
スクエニから漫画化して下さい🤣
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気球
魔王の前世は何だったんですか?🤣
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ポチョム
こっちが前編でしたか!!読む順番を完全にミスりました🤣🤚
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あっちん
え!?間男?? あ、、、魔王か😗チッ めっちゃ長編❗️🤝 最近ちょっと静かだなって思ったら執筆活動中だったのね🤣 →→→後編へ続くっ
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Mukumi
携帯小説みたい✨ 引き込まれました😆
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よしP
夢中であっという間に読んじゃった☺️
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A.T.Ryoma
魔王様 良いお時間をお過ごしになられて 私も大変嬉しいです。 楽しく読ませてもらいました😆