贅沢する秋
東京を出発したのは深夜。
上高地のバスターミナルに着いた頃には、もうすっかり明るくなっていた。
ここへ来るのは三度目。もちろんいつもこの季節、秋だ。
今回は3人で登る。
本当はオートキャンプの予定だった。10日前にふと「涸沢にしませんか?」と聞いてみたら、二つ返事でOKが出た。正直驚いた。
荷物は軽くしてきた。
最近になってようやく、必要なものと必要でないもの、諦めるものと諦めないもの、少しずつ整理できてきた気がする。
夜にポツポツと光るテント群を撮りたくて、三脚だけはザックに括り付けた。
上高地の観光名所河童橋を過ぎて、しばらく平坦な道を進む。
「しばらく」そう書くとあっさりしたものだけど、3時間の道のり。
目指しているのは涸沢カール。
言わずと知れた紅葉の名所。
そこへたどり着くには、この3時間の平坦な道のあと、さらに登りが3時間から4時間かかる。
少なくとも6〜7時間は歩かないと着かない。
…遠い。でもそれがいい。
荷物は重くても、平らな道なら会話しながら楽しく歩ける。ここはまだ標高が低いけど、ちらほらと色付く木々が美しい。
途中で少し休憩。
ここ徳沢のカフェにはいつも寄る。
ココアを飲んで、大福を食べた。
時おり風に煽られて落ち葉が舞う。
ただそれだけなのに、心を打たれる。
平地最後の山小屋前。登山装備の人々が思い思いに休憩している。
ここを過ぎれば、いよいよ登り。
登山道に入ると、山装備の人だけしかいない。
誰もが必要な荷物を自分で背負い、自分の足で登る。
山小屋泊の人の荷物は小さく、テント泊の人の荷物は大きい。
しばらく歩いて沢に出た。
ここでお昼ご飯にすることに。
沢の水は清く、煮沸すれば十分飲めそう。インスタントのうどんに使った。
もちろん、うまかった。
さらに登りはキツくなり、いよいよ足に負担が掛かる。
それでも周りの景色の素晴らしさに救われながら歩を進める。
まるで絵画の中を歩いているような、秋の旅行パンフレットの中にいるような。
黄色と赤に染まる木々が、とにかく美しい。
ナナカマドの木は、葉も実も紅く色づく。
紅い実を抱えながら、紅い葉が落ちずに残る時期はわずかだ。
これを見たくて、ようやく三度目で叶った。
最後の登り。
ゴールの山小屋が見える。
………着いた。
生ビールは売り切れてたけど、登りきった達成感のなか、壮大な景色を眺めてのビールはやっぱり最高だ。
平日にもかかわらず、たくさんのテント。
このすぐ前の土日は大変な数のテントだったそう。
ずっと雪が残るカール。
秋でももうかなり寒い。
テントを張って暖かい寝袋に入ったら、いつの間にか寝ていた。
昼寝から起きて晩ご飯の準備。
今晩は鶏つみれ鍋。
鶏つみれの元は自宅で大量にこしらえてきた。
さらに炊き込みご飯と、日本酒。
たまらない。
山で料理するのは大変だ。
何もかも背負ってこないといけない。少し料理するだけでも、十分にスペシャルな晩餐になる。
日が暮れて周りのテントに灯りがともる。
夜景を撮るために三脚を持ってきたけど、やっぱりうまく撮れない。これはもうあれだ、カメラのせいだ。
翌朝は寝坊。朝焼けに染まる山々を見事に見逃した。
「もう2回も見たから今回はいいや。それより寝たい。」みたいな気持ちが無かったとは言えない。
朝ご飯を振舞ってもらった。
吉田うどんを腹一杯食べたところで、今日は遠回りして下山する。
パッキングも何とかできた。
ザックにちっとも余裕が無いのが今後の課題。
パノラマコースから下山。
前にここを通ったのは2年前。登山の楽しさが凝縮されたコースだと思う。
遠回りになるけど、ぜひ二人に体験してもらいたかった。
下山なのに登る。
岩肌にへばりつきながら登る。
降りることもある。ほぼ垂直にかなりの落差。
稜線にでれば正にパノラマの景色。
途中、40分ほど寄り道して岩に登る。
360度ぐるりと見渡せる景色はまさに絶景。ピークに到達した者だけが味わえる贅沢だ。
下山しているはずなのに、朝出発したテント場がずっと下のほうに見える不思議。
寄り道もあって足は相当の疲労を感じている。
歩くと疲れる、歩かないと着かない。
久々の登山に加えて普段からの運動不足がこたえる。
水場があったので少し休憩。
この日は暑かったけど、水は冷たくておいしい。
橋を渡って平坦な道に合流。行きに寄ったカフェで昼ごはん。
カレーそばというものを初めて食べたけど、これは次も頼もうと思った。
帰りは少し遠回りだけど木道を行く。
猿の生活圏なのか、かなりの人が通っても平然としていた。
日が暮れる前になんとかゴール。
ご褒美のソフトクリームをほおばった。
テントを担いで山へ登るは正直しんどい。
それでも登るのは、それ以上のものがあるからだ。
きれいな景色を見たいだけじゃない、うまいビールを飲みたいだけじゃない、スペシャルな料理を味わいたいだけじゃない。
テントを担いで山へ行ってみればきっとわかる、こんな贅沢は他に無いことが。
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masamomomiyu
お疲れ様でした^_^紅葉🍁が素敵ですね。 上高地からの唐沢最高ですよね、僕も大好きです^_^ いつかどこかの山頂かキャンプ場でお会いできたら嬉しいです^_^
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кочапо
テン泊とは思えない豪華な料理… 紅葉に染まる涸沢カール…全てが羨ましいです‼️ 暫くテン泊登山してないなぁ また虐められたい^_^;
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fu.u
山が色づき紅くなったナナカマド、素晴らしい景色ですね🍁 テントの灯りがカラフルでテン場は幻想的だったのでしょう⛺️ そば屋のカレーそばとても美味しいですよね、家でもカレーが残ったらかけそば、うどんにカレーを乗せましょう🍛 贅沢ですね✨ お疲れ様でした👍
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BEKE
涸沢の紅葉はホント贅沢なんでしょうね〜‼︎ 言葉のチョイスがいつも素敵だな〜✨ って思ってますが、今回はdaimaruさんの声で聞こえて来ました〜。 daimaruさん独特のイントネーションが心地いい内容でした〜😊 いつか、一緒に山歩きしたいです‼︎
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気球
テン泊登山に憧れて山岳テント探してます。 自分の目でこの景色をいつか見てみたいです。 そして夜景…私もカメラのせいで上手く撮れません😝
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ISHIMU-
すべてが美しいですね〜😳 心が洗われそうです ちなみに7時間の道のりって 何万歩歩くのでしょうか・・
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つかひろ
手に届く紅葉🍁はテンション上がりますね。 山々で頂く料理の特別感…沁みますね。
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mochamochamaiko
あぁ憧れです🤤絶対に見てみたい景色です✨👍
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nuber12
おかしい!! 何故だ!w 同じ場所に行ったのに 写真の写りかたが違う!!w さすがっす!w でも 同じ景色を共に観れたことは 本当に良かったっす! 涸沢に誘ってくれて ありがとうございます!! 色々お勉強させてもらいました!! 次は オートキャンプで!www (たまには登山でも良いっすよーw)
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LAB.
本当に綺麗な風景ですね。 高校生の時に、ワンダーフォーゲル部に 所属していましたので、 上高地にはよく行きました。 涸沢カール、懐かしいなぁ。 すっかり歳を取り、山登りするには 体力に自信がありませんが、 いつかまたむすこ達と訪れたいです。 素敵なお写真、ありがとうございました😊
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chiyo
どの写真もほんと〜〜に綺麗ですね😍✨テント場🏕の色とりどりのテントも紅葉の一部みたい😊🍁 この光景は自らの足で歩かないと出会えない特別なものなんでしょうね〜〜😊✨ お写真だけでも心躍りました✨ありがとうございました😊🙏✨
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opoyopoi
歩くと疲れる、歩かないと着かない…名言ですね いつもdaimaruさんの言葉は何かを感じさせる、考えさせられるものばかりで何度も読み返してしまいます 山行は自分との戦いですね 今年も綺麗な景色ありがとうございます😊
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Martin
昨年も羨ましいと思っていたら、あっという間に1年経っていてビックリです👀❗️ 最近は普段使いにも使えて、登山用でも使えるようなテントがとっても欲しいです☀️ daimaruさんはファウデのテントでしたっけ? ファウデのテントは見た目とお値段がお好みな感じなんです😍
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taisa
本当に最高でした。🍁 もう何人に白熱して話したか分かりません笑 来年の春楽しみですね🗻⛺️!
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トム
先に同行お二人の投稿を拝見しましたが、素敵な紅葉っぷりですね! 登山は6年ほど前に駒ヶ根、2年ほど前に地元の本宮山に登った程度です。 体力の低下から、もう無理かなぁー😱
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danmitsu
憧れの涸沢の紅葉🍁 素敵すぎます😌 下りのルートは結構危険箇所ありそうに見えましたが、小学校低学年の子だとちょっと厳しいですかね?
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HRK
初めまして、HRKと申します。 先々週からDAY OUTはじめました。 よろしくお願いします。 少しだけ登山をかじった身としては涸沢テント泊は憧れです。鮮やかな紅葉の写真、とても綺麗でした。