劔

一般ルートで日本最高難度と呼ばれる山、ツルギ。

槍と並んで長年憧れてました。

登山に於いて日本最高難度、日本三大急登と言う言葉は信用してません…

日本三大祭り、日本三大花火、日本三大うどん…が幾つもあるように山にももっと難しい山は沢山あります。
百名山、ノーマルルートでのピークハント、夏山での恐怖度に限定して言えば日本最高難度だとは思いますがそれでもその山容、ネーミングに憧れいつか登ってみたいとずっと思っていました。

登山を始めてからの目標のひとつではあったのですが関東からのアクセスの悪さからずっと距離を置いていました。
今回ゴートゥートラベルという偉いお方の粋な計らいのお陰で劔と向き合う気になれました。

初めての北陸新幹線で富山入り。Go to Travelは行程中一泊以上すれば交通費も含め適用されるらしいので最初と最後は富山駅周辺のホテルを予約して中二泊三日を登山に使おうと計画しました。

普段の山行はほとんどルート情報を得る事もせず無計画で行ってしまうのですが劔は岩の殿堂、滑落すれば確実に死ねるポイントが幾つもあるので今回ばかりは入念にネットで情報収集。

調べれば調べるほど不安になる…

最近はセルフビレイと呼ばれるカラビナやハーネス、スリングで安全を確保しながらノーマルルートの剱岳を登る人も増えているとの事でその方法も考えましたがスノーボードで10mオーバーのジャンプ台を飛んでいる自分にはどうしてもそれが許せない…

意外にも「日本最難関と言うから身構えて行ったけどそれ程でもなかった。」「剱岳は足場が整備されていて思ったより簡単。」「八丁尾根からの両神山の方が難しい」という意見が多くありました。
幸い同じルートでの両神山は経験済みです。それも雨の中。危ない場面はありましたが…
自信を取り戻し、いつも自分の無謀な挑戦について来てくれる嫁を信じセルフビレイなしで行く事に決めました。
ここまでの葛藤、三日間w

ホテル内で最終パッキング。
天気予報的には星空の撮影は無理そうなのでカメラ機材は全て置いて行く事にしました。
その分ビールを担ぎあげてやろうと結局20kgオーバー。

レンタカーで立山駅へ
剱澤キャンプ場で2泊して剱岳と立山の百名山を一気に登る計画ですが多分、劔で満足して終わりだろうと思いながら車を走らせる。

富山側からのアクセスは富山駅から1時間程の立山駅でケーブルカーに乗換え。その後バスで1時間で立山への玄関口室堂ターミナルへ到着。

バス内で初音ミク的なフィギュアに立山の雄大な景色を見せているお方に遭遇。

室堂ターミナルで偶然大学時代の部活の後輩、アウトドア界の重鎮、Sky High Mountain Works北野氏とばったり！
久々の再会にテンションが上がる。

登山とBCスノーボードの経験が長い割には初めての雷鳥沢。何度も友人から誘われましたが休みが合わず行けずじまい。

…天国ですね。

ここはスルーして更に先の剱澤キャンプ場を目指す。

雷鳥沢からの登りは暑い事もありかなり辛かった。

昨日宿泊したAPAホテルで水とリポビタンのジェリーをサービスされこれ以上荷物を増やさないでくれと思ってましたが役にたった！
元谷社長有り難う御座います。

なんか天気が良過ぎる。
予報では行程中一切☀️はなかったのに…
一眼持ってくれば良かった😂

剱岳を真正面に望む最前列の一等地を確保。
トイレ付近のためか全く人気が無かった…

室堂から4時間程で今日の宿泊地に到着。
購入したばかりのオリンピックを連れて行きたかったのですが今回は登山用にカスタムしている長年の相棒オリンピック。

北アルプスのキャンプ地にしてはかなりラグジュアリーなサイトになりました！

今回の宿泊地剱澤キャンプ場はトイレと水場はあるのですが売店のある小屋には往復15分掛かります…
荷上げしたビールでは当然足らないので買出し。

剱澤小屋には遭難の状況が掲示されていました。
コロナの影響で前年比大幅減…

ここ数年は登山でも美味しいものが食べたいとフリーズドライ食品は避けていたのですが、最近の登山のバテっぷりと自粛生活による体力低下を考慮し今回の食材は軽量化しました。
フリーズドライ祭り‼︎
事前に大試食会を開催し厳選されたモノばかり。

ご飯を炊いて初日だけは冷食の肉。

明日は劔。
天気予報によると午後から崩れるらしいので早起きして山頂アタックする事に。
追ビールを買いにいくのも面倒なので早めの就寝。

2時位にトイレに行くとヘッドランプの明かりが弱々しい事に気付く。もう一台も暗い。
これはちょっと無理と早朝出発は諦め二度寝。

昨日の残りのご飯でおにぎりを作って6時半に出発。大分出遅れました。
本当は4時半くらいに出発し先行者について行って難所の攻略も参考にするつもりでしたがあまりにも遅すぎて結局自分達で全てルートファインディングする事に…

剱澤小屋を経由して剣山荘に到着。
無事にここまで戻ってきて生ビールを味わいたい。

剣山荘からすぐに本格的な登りが始まる。

剱岳は要所となる鎖場には看板があります。
全部で13箇所。
9番までは上りでそれ以降は下り。
難所と呼ばれているのは
9番のカニのたてばい、10番のよこばいです。
仮に登頂できたとしても最大の難所であるカニのよこばいは登頂後です。
剱岳の難しい所は行程中のほとんどに緊張を強いられ、下りもクライミングの連続なので常時全身運動する事だと思う。

剱岳手前にあるピーク、前剱に到着。
隣りで爆睡している俺の寝相攻撃と闘いながらせっせと嫁が握ったおにぎりを食べる。

目指す頂が見えてきた。
よく見ると壁にへばり付いている人がちらほら…

難所のひとつカニのたてばい
急斜度の岩場を50m程登ります。
より垂直に近い前半の岩場がこの鎖場の核心部。
落石にも注意を払わなければいけません。

いざ取り付こうとすると血痕らしきものが、そこらじゅうにある。しかもまだ乾ききってないような…

渋滞は無かったので他人のムーブは参考に出来ません。自分でホールドを探すしかない…
下手くそ過ぎて途中足場が見つからず力技でクリア。

山頂までは標高差150m。鎖場以外も緊張は続きます。
途中あの血痕の主と出会いました。
顔面に血の滲んだデカい絆創膏を貼った女性がいました。
どうやら無事だったようです。

剱岳名物の渋滞も全くなく山頂に到着！
360度の大パノラマ、最高の天気なのですがこの後の苦行を考えると素直に喜べません…

最大の難所と言われるカニのヨコバイ！
断崖絶壁をトラバースするのですが最初の一歩の足場が見えないらしい…

ココ！
鎖に身を預けて覗き込むと足場は少し見えました。
剱岳の鎖はピカピカで安心感はあります。

トラバースは鎖様に命を預けクリア！

自分が設定した今回の登山の裏核心部、垂直梯子に来ました。
梯子の下降はどうも苦手です。
取付き時、一番怖い梯子のピークで身体を180°回転しなければならないので…

嫁は余裕のご様子。

カニのよこばい、垂直梯子クリアで安堵感に包まれましたが本当の闘いはこれからです。

劔の遭難の多くは難所と言われるカニ系ではなくその後の下山時の緊張の糸が切れた時に発生していると言われています。

オシリさんの「家に帰るまでが設営だ！」と言う有り難いお言葉を胸に最後まで緊張の糸を緩めませんでした。

なんとかコースタイム通り13時に剣山荘に無事戻って来れました！
久々に味わう達成感で思わず嫁とハイタッチ‼︎
登頂記念に左下のグレーの手拭いを購入。

テン場までまだ歩くのにやってしまいました…

テン場まで戻って来ました。
翌日は立山三山経由で室堂に戻る計画ですが思った通りそんな気は全くナシ。
携帯の電波は昼間は不安定ですが夜はバリバリ繋がります。（ソフトバンク）

翌朝、軽量化の為余った食材を強引に喰らう。

下山時今回初の雷鳥さん。
立山の雷鳥は人に慣れているのか逃げようとしないです。
写真撮り放題。

次はこの天国に泊まって立山を目指そう。

ゴール！
噂通り疲れ切った中での雷鳥沢〜室堂ターミナルの登りはキツかった。

新幹線の時間まで余裕があるので路面電車で海水浴場に行く事に。

山から海へ
贅沢過ぎる…

自分登山史上BEST3に入る位充実した登山が出来ました！
天気が良過ぎたためこれ以上はもう無いと思われ、もう一度登れと言われるとちょっと考えてしまいますが…

百名山39座目。剱岳制覇！