転生魔王ののんびりキャンプライフ🌋❹
ワシは前世、ドワーフと呼ばれた種族じゃった
それもただのドワーフでは無いぞ?
上位種に進化した「エルダードワーフ」といわれる普通のドワーフとは一線を画す存在だったのじゃ
何人もの高弟を従え、更にその下には何百人もの弟子を引き連れたワシは、幾つもの人族の国や亜人種の国家から請われて技術を奮う、いわば流れの職人集団の長でもあった
中にはそんなワシらを取り込もうとする輩も居ない訳ではなかったが、権力を笠に横柄な態度を崩さん者共とは根本的に信頼関係を築くのは難しかった
今から思えば、自国の有利を約束してくれる我々を他に渡したくは無いという、奴等の考えも分かろうというものじゃが、当時は若気の至りかドワーフの気質か、それぞれの国のトップと衝突し刺客を差し向けられる事もしばしばじゃった
おっと、ワシらが権力を求めていたというわけじゃないぞ?
ワシらドワーフ族は持てる技術を高め、真理を追求して様々なモノを創り出す事に喜びを感じる種族じゃが、所謂、職人気質でソレ以外の事には執着しない者が多いんじゃ
もちろんワシもそんなドワーフ族の気質を受け継いでおり、「親方」と呼ばれる事に抵抗は無いが「貴族」様だの、「技術長官」様だのと呼ばれるのはまっぴら御免じゃった
「仕事」が終われば浴びるほど酒を酌み交わし、そこら辺で雑魚寝するワシらに、そんな堅苦しい肩書きは全く必要なものとも思えんかった
結局、請われて仕事に赴いた様々な国家には定住出来ず、逆に追われる身の上になりがちだったワシらじゃったが、ある時「魔族」の国からの依頼を受ける事になった
魔族とは亜人種の中でも格段に強力な魔力を持ち、その身体能力も桁違いな戦闘特化型の種族じゃ
依頼自体は魔国の公爵家からのものじゃったが、成り行きで魔国の王「魔王」様とも知己を得られた
ワシらの仕事に満足して下さった魔王様は、やはりそれまでの国王や領主のように、我々に魔国で仕事をしていかないかと持ちかけてきたが、散々痛い目に遭って来たワシらはその誘いを固辞し続けた
権力に媚びぬワシらは魔王様の不興を買い、皆殺しになっても文句は無いところじゃったが、その魔王様は少々変わっておられるようじゃった
忙しいであろう執務の合間にワシらの仕事場や現場に単身でお出でになり、気さくな様子で差し入れなどを頂き、目を輝かせてワシらの仕事振りをご覧になっておった
なんでも一歳で魔王位を継承してからは執務に忙殺され、仕事を楽しいと思った事などなかったそうだ
魔国の様々な仕事を請け負い、それなりに長く魔国で過ごして、魔王様はじめ魔国の魔族とも付き合いが長くなった頃にそれは起きた
人族の国家が「勇者」を送り込んできたのじゃ
権威や権力が大好きな奴等は、魔族の脅威を放置出来なかったのであろう
わざわざ虎の尾を踏む事に躊躇いはなかったのじゃろうか?
、、、しかし、魔王様をはじめ、高位の魔族達の一角は勇者に倒されるという結果になった
全ての魔族が倒された訳では無かったのだが、その人族の国家は、以前ワシらも対立した国であった為にワシらも勇者の引き連れた軍勢によって皆殺しになったのじゃ
あの気さくな魔王様と一緒に死ぬのであれば、この結末に微塵も後悔は無いが、唯一、許せない事は魔王様を貫いた勇者の持つ剣がワシが打った神器であった事じゃった
あの剣で無ければ、勇者といえどそうそう人族などに遅れは取らない魔王様じゃったろうが、自らの仕事を呪う事があるとは、ワシもまだまだじゃったようじゃ、、、
こちらの世界に転生したワシは、つい先日、前世の記憶を取り戻したのだが、やはり身に付いたドワーフとしての気質なのか、物作りはやめられんと見える
魔国に定住するまでは、それこそアチラの世界を転々と野営しながら仕事をしたせいか?今世でもふらふらと野営に赴くのは身体に馴染む
前世のように責任ある立場でのしくじれない仕事と違い、今世での物作りは努めて仕事にはしないように気を配っている
もちろん仕事も家庭も持ち、そこに責任はあるのだが、記憶を取り戻す前からやはり魔王様を討った剣の事を悔いているのじゃろうか
魔王様も、ご自身の願い通りに魔王などでは無く、自由なご身分で転生なさっておられるように願わずにはいられない
度々、摂政殿の目を盗んで抜け出され、車座で酒を呑み、身分の垣根を越えて「友」となった彼の方の事に思いを馳せるワシじゃった
side 魔王
最近ではSNSも始め、妻をはじめ子供達からも驚かれている
キャンプ関係のSNSでは実際に会った事は無いが仲間と呼べる方々とやり取りがあり、楽しい時間を過ごさせて頂いたりもしている
インスタグラムではグループチャットなどに参加させて頂き、色々な情報や知識、会話もして、何故もっと早くやっていなかったのか?と後悔するほどだ
自作のキャンプギアについても、仲間の一人が自分と非常に趣味が合い、様々な助言を頂きながらDIYを楽しんでいる
前世、酔った勢いで何度もエルダードワーフの親方に弟子入りを志願したのだが、鼻で笑われて聞かなかった事にされていた事を思い出す
魔王という立場上他の種族に頭を下げる事など許されない、自分の事を考えて流してくれていた「友」に懐かしい気持ちになる
様々なアイデアをもらい、自作のキャンプギアをDIYし、それについてまた会話を交わす
もし前世で魔王では無く、弟子入りが叶っていたらきっとこんな感じだったのではないだろうか
我が「友」である親方は、今もアチラの世界で仕事に精を出し、浴びるように酒を飲んでいるのだろうか
コチラの世界でも親方のような方に巡り会えた事に感謝しつつ、もし今度お会い出来た折にはとっておきの酒を一緒に酌み交わしたいと思い
「あ、そういえば彼の方、酒飲めないって言ってたなぁ、、、」
と思い出した俺だった、、、
転生魔王ののんびりキャンプライフ❹
「 完 」
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う〜ちん
こんばんは〜 ラス2画像のヒーターアタッチメント 完璧じゃないですか! 一目惚れしてしまいましたw
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よしP
めっちゃ楽しく読ませていただきました‼️🤣👍 これからも趣味の職人を極めるべく互いに精進いたしましょう😘 やはり酒は呑めませんけど😅
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まさたろう
魔王様、差し入れするのがなんだか可愛らしいですね🤣 気さくな魔王って、、、笑
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A局のRUO
どれも自作の完成度が凄い! ドワーフが持っていそう! そして、いつか人族とも和平関係を結んでほしい🤪